太陽の手

《太陽の手》は、白糠町開拓功労者顕彰碑として、1966年に国道38号線から見える坂の上公苑に設置されました。高さ12.8メートルの塔に広げた左手が印象的な作品ですが、写実的な手の表現ではなく、指は角ばり、手のひらにはキリストの聖痕のごとく穴があけられています。具象彫刻家である本郷の野外彫刻の中では、特異な作品です。制作過程を見ると、本郷の意図が理解できます。

設置場所は街からも海から見える高台であるため、本郷は遠望できるように高さ12メートルの塔にしました。造形的には、塔の上に花が咲いたような形を最初に考えました。その後、イメージされた花は開拓記念碑にふさわしく、開拓者の手に変化しました。手は先人の崇高な精神を表現しています。困難を乗り越え原野を切り開いた開拓者の手の逞しさを強調するため、形は単純化されます。そして、太陽を呼び、太陽に応える手にするため、手の中央には大きな穴が穿たれます。手のひらに太陽が入り光り輝くイメージから、穿たれた穴には金箔が貼られました。こうして《太陽の手》が完成されます。

本郷は、作品に詩を添えています。

「太陽の手 ある開拓記念碑に寄せて」

一つの大きな手が天空を 支える
逞しく強い樹のような手
その手は
ときに 太陽に応え
ときに 雲を呼び
ときに 風を待つ
その手はまた
荒野を沃土にかえた
鍬の手でもあるのか
その手はまた
太陽を抱いているのか
それとも
太陽それ自身でもあるか
あの 節くれた指は
五本の柱なのか
それとも
五条の光なのか
それとはともあれ
太平洋を望む
丘の上に
いま
開拓者の先人たちの
魂が蘇ったのだ
白糠開拓八十年の日に
太陽の手が
大地から天空に
向かって
聳え立ったのだ