早春賦
太陽の陽射しを避けるように、両腕を上げ背筋をまっすぐ伸ばした若々しく健康的な女性がひとりたたずんでいます。
この作品は、1983年に光塩学園女子短期大学に創設30周年記念として設置されました。本郷が光塩学園に196年に講師なったことが縁です。
「早春賦」というタイトルは、本郷の妻・重子が命名したものです。
《早春賦》と同型のものが、釧路市幣舞橋(ぬさまいばし)にあります。1977年に設置された《道東の四季-冬》です。幣舞橋には、ほかに春と夏、秋の像があります。春は舟越保武、夏は佐藤忠良、秋は柳原義達がそれぞれつくっています。4人は、20代から深い信頼と友情で結ばれた彫刻仲間です。戦前から戦中の苦しい時代を励ましあいながらお互い彫刻家として生き、戦後日本を代表する作家となりました。 春のイメージの《早春賦》と同じ造形の作品に、「冬」というタイトルがつけられているのは、一見不思議にも思われます。当館には、「冬」の像の素描が所蔵されていますが、そのタイトルには《春を待つ》と書かれています。つまり本郷は、冬という厳しい季節を、数か月後には必ずやってくる春を待つ季節としてとらえていたことがわかります。