本郷新記念札幌彫刻美術館
トップページ本郷新賞>第14回本郷新賞受賞作
 

第14回本郷新賞受賞作

1.選考経過
平成21年5月21日(木) 推薦委員(78名)委嘱
 6月12日(金) 候補作品の推薦締切(全国から29点の作品の推薦)
 7月 5日(日) 選考委員会開催(本郷新記念札幌彫刻美術館)
 8月 3日(月) 正式発表(予定)
 9月 5日(土) 贈呈式
 9月 5日(土) 第14回本郷新賞受賞記念「江口週彫刻展」開催
 〜10月25日(日)  (会場:本郷新記念札幌彫刻美術館)

2.選考結果

(1)選考委員会・・・平成21年7月5日(日)
(2)選考委員・・・開催要項の通り
(3)推薦作品・・・29点
(4)選考委員の厳正な審査の結果
栃木県庁舎本館1階県民ロビーに設置された江口週制作の《時を漕ぐ舟》を受賞作とした。

第14回本郷 新賞候補作品地域別一覧
北海道 2/青森県 1/宮城県 1/山形県 1/茨城県 1/栃木県 1
東京都 6/神奈川県 1/山梨県 1/長野県 1/富山県 1/愛知県 4
兵庫県 1/鳥取県 1/広島県 1/山口県 2/宮崎県 1/沖縄県 2
合計 29点

講評
 第14回本郷新賞選考委員 酒井忠康

  第14回本郷新賞の選考委員会は、この7月5日に開催されました。これまで本郷新邸のアトリエ(東京・世田谷)で開催されてきたのですが、こんどはじめて本郷新記念札幌彫刻美術館に場を移して行われました。
IT 時代の情報操作によって、北海道から沖縄まで公共的な場に設置された作品が推薦者によって各地から寄せられ(複数の方から推薦を受けた作品もかなりありましたが)、選考委員会のテーブルに上げられたのは29人の作品でした。選考の対象となった作品の、規約の適合・不適合の判別をした上で、選考委員による論議をかさね、また二回の投票を経て4点にまでしぼりました。さらに慎重に検討した結果、最終的に江口週氏の《時を漕ぐ舟》を選ぶことになりました。
これまで木彫作品の受賞はありませんでしたので、その点でも注目に値するのではないかと思います。この作品の魅力は、何といってもフォルムの緊張感と素材を生かした清々しいイメージを招来するところにありますが、同時に公共の場に設置される工夫にも配慮があって、じつに親しみやすいモニュメントになっています。
素材は栃木県日光市の細尾地区の住民に長く親しまれてきた樹齢約300年の栃の木で、全長10.7メートル、重さ約4トンの巨大な作品に姿を変え、新しい栃木県庁舎の広い空間(県民ロビー)に設置されています。
制作は「トチの木・転生プロジェクト」(実行委員会=代表藤井清)によるもので、新庁舎竣工記念として贈呈されましたが、「企画趣旨」には「原木の内なる意志に、現代を生きる私たちの意志(造形)をくわえることで、栃木県ならではの、新たなみらいを開く象徴となる文化的・且つ機能を兼ね備えたモニュメントを制作しようとするものです」と書かれています。江口週氏の指導下で、地元の樵や彫刻家たちをはじめ、多くの住民たちの参加を得た、いわば共同作業の中に実現したプロジェクト言っていいでしょう。
これは公共的な場に設置された彫刻であると同時に、彫刻の素材(栃の木)に多くの人々が自然に親しむことを暗にねらった工夫も施され、彫刻のフォルムを壊さない「休憩用長椅子」が作品に寄り添うようにつけられています。
これはまた、舟の形に転生された栃の木のモニュメントです。題名にも暗示されているように、「悠久の時を流れる川」(作家のことば)を漕ぐ舟ということで、ここを訪れる人達の心の風景の中をわたりいくイメージの喚起という無言の役割をも担っています。
(世田谷美術館館長)

第14回本郷新賞受賞作《時を漕ぐ舟》概要  受賞作写真

制作者 江口 週 EGUCHI SHU
材   質 木(栃)
寸   法 高さ198×横1070×奥行254 cm
制作年 2007年
制作年 2007年9月24日(除幕式:2007年12月14日)
設置の趣旨 約300年前、日光滞在中の八代将軍吉宗は古老から栃の木を愛する地元の人々の話を聞かされ、栃の実をあたり一面に蒔いたと伝えられています。この木もその中の一本です。県木である栃の木の由来を次世代に継承するとともに伐採された栃の木を新庁舎のモニュメントとして転生させ、県民に親しんでもらうことを趣旨としました。
設置者 トチの木・転生プロジェクト実行委員会 
管理者 栃木県庁 
設置場所 栃木県庁舎 本館1階県民ロビー
周囲の環境 宇都宮の中心地、官庁、宇都宮美術館、文化会館、二荒山神社などの立地周辺は栃の木の街路樹が続く良好な環境。
制作意図 かつての水運の要として、人々の生活や交通に大きな役割を果たした鬼怒川や那珂川、渡良瀬川。江戸への物資の輸送、日光への御用荷物の運搬、生活物資の調達など、河川は地域経済の動脈であり、舟はまさしくその発達の担い手でした。舟はまた、川漁や釣り、川遊びに欠かせない乗り物として、人々の暮らしと深く関ってきた事はいうまでもありません。往時の活き活きとした情景が、今も多くの資料として残されています。
  悠久の時を流れる川、そこに漕ぎ出る舟。舟は、私たちの歴史と暮らし、そして新たな未来の象徴でもあります。歴史に学び、今を語り、未来と対話する場。舟のカタチに転生された栃の木のモニュメントは、新庁舎を訪れる多くの人々や子どもたちの心に、単なる造形鑑賞に終わらない「何か」を残し、鮮烈なメッセージを伝える作品となることでしょう。  


第14回本郷新賞を受賞するにあたって
江口 週
 《時を漕ぐ舟》は、「トチの木・転生プロジェクト実行委員会」が主体となって、栃木県庁・行政棟1階エントランスに新庁舎建設にともなう、竣工記念として贈呈するかたちで設置されることになった。(株)AWPの企画・プロデュースにより、宇都宮市松井木材市場内で制作がはじめられた。製作スタッフは私を含めた4人の彫刻家、造形作家であった。この県木によるモニュメントの制作を依頼されたときから、そのかたちに舟のイメージを強くもっていた。そして、最初の制作作業の取り掛かりは、実生のトチノキを湾曲した樹形をそのままに、木の芯に沿ってチェンソーで水平に上下に二分割する作業からを始めることに決めていた。この作業は、土地のいわゆる樵夫さんに任せるより他にない。そして、墨入れからチェンソー作業が終わるまでの最初の作業は予想以上に順調に終了した。
10メートル余りの一本の木のその主要な部分の長さと量は残し、伐り分けた部分をいろいろな形に成型し本体に戻して再構成していく方法は、今までの経験から共同制作ではそれぞれの作家の独自の技が生かされ、楽しく仕事ができる方法と考えていた。今まで何度か木の大作を制作してきたが、今回ほど楽しく平等に作業ができたことはないと思っている。そして、この《時を漕ぐ舟》が多くの人々に親しまれ、特に未来につながる多くの子供たちにも親しまれて、転生の更なる3百年の時を生きていってほしいと思っている。
このような夢を託した《時を漕ぐ舟》の受賞は、私、そして、わたしたち現代作家の仕事への励ましと思って拝受し、制作に協力して下さった皆様の厚情に対してあらためて御礼申し上げたいと思います。
今日まで、私は空間にもたらす言葉を探し求めて制作を続けてきたように思います。
普段ギャラリーや美術館のホワイトキューブスペースで制作展示してきた自分の表現を前面に押出したカタチは、時として押し付けのように受け取られることがあります。とくに多くの人々の交錯する公共の空間の場合、その兆候は顕著で、私にとりましては常に困窮を余儀なくされます。そんな時、私は自分をリセットするために先ずその空間に秘められた言葉を発掘する気持ちで、与えられたスペースを自分なりに把握し、少しでも大きく魅力的に見せるようにすすめていきます。それは、言ってみれば演出家の仕事のようなものなのかもしれません。その過程には普段、作品を制作する手わざだけではなく、「場」に対して想いを馳せ、もう一度自分自身に立ち返りながら進める見えない仕事が存在します。彫刻を制作することは、手わざの占める要素がつい大きくなりがちですが、空間を彫刻するということは、高揚する精神と、この「場」に対する想いを最後まで維持できるか否かがすべてのように思います。それは、画家が一つのキャンバス「空間」のなかで絵具を重ねていく仕事に限りなく近いのです。
 このたび、本郷新賞を受賞しましたことは、私にとりまして全くもって寝耳に水なことで、少々戸惑っております。しかしこれを機にさらなる進化を目指し制作に精進を続けることがきればと存じております。

江口 週 EGUCHI SHU

1932 京都市生まれ
1956 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業

■個展
1964 秋山画廊,東京
1966 秋山画廊,東京
1972 第七画廊,東京
1974 第3回平櫛田中賞受賞記念展(日本橋高島屋),東京
1980 愛宕山画廊,東京,’81・’82・’84・’86・’89・’91・’93・’96
1981 東京画廊,東京,’88・’91
1985 画廊・岳,東京,’04・’06
1988 フレッド・ヤン画廊,ミュンヘン,’87
1992 石屋町ギャラリー,京都
1995 SOKO東京画廊,東京
1998 現代彫刻センター,東京/ 相生森林美術館,徳島
1999 伊丹市立美術館
2002 菩提樹,高松
2003 かねこ・あーとギャラリー,東京
2004 ARTBOX,横浜/カスヤの森現代美術館,横須賀
2005 ギャラリーせいほう,東京,’08
2006 画廊・岳,東京
2008 江口週展「間の作法」GALLERY A4  ,東京 他

■グループ展
1963 彫刻の新世代展(東京国立近代美術館)
1964-65 現代美術の動向展(国立近代美術館京都分館)
1965 新しい日本と絵画と彫刻展 (ニューヨーク近代美術館企画,サンフランシスコ他を’67まで巡回)
1969 第1回現代国際彫刻展(箱根彫刻の森美術館)/ 現代世界美術展・東と西の対話(東京国立近代美術館)
1971 現代日本の彫刻展(京都国立近代美術館)
1981 日本近代彫刻の展開展(神奈川県立近代美術館)/現代日本の美術(宮城県美術館)/ 1960年代-現代美術の転換期展(東京・京都国立近代美術館)
1991 日本近代彫刻の一世紀(茨城県近代美術館・徳島県立近代美術館)
1996 日本の美術−よみがえる1964(東京都現代美術館)/ 手の復権−道具と美術(神奈川県立近代美術館)/「コレクション−10年の成果、現代美術へのいざない」(伊丹市立美術館)
2003 溝田コトヱ・江口週・関敏三人展(アトリエK,横浜)/三人の作家展 江口週・溝田コトヱ・渡辺豊重(まるや工芸店
2004 彫刻家の平面(始弘画廊,東京)/ 彫刻家の平面(現代美術館,京都)/6人展(始弘画廊,東京)
2005 木彫から立体造形へ−1960年の新人たち(三鷹市美術ギャラリー)/ 木片の構成(かねこ・あーとギャラリー,東京)
2006 コレクションに見る彫刻の変容−近代から現代へ−(神奈川県立近代美術館鎌倉別館)
2007 開館記念特別展 近代彫刻を俯瞰する (横須賀美術館)/ ねりまの美術2007彫刻3人展 柳原義達・土谷武・江口週(練馬区立美術館)他

■受賞
1965 第1回現代日本彫刻展大賞(宇部市野外彫刻美術館)
1971 第4回現代日本彫刻展毎日新聞社賞(宇部市野外彫刻美術館)
1974 第3回平櫛田中賞
1977 第8回中原悌二郎賞優秀賞
1993 第24回中原悌二郎賞
1997 平成8年度芸術選奨文部大臣賞
2000 紫綬褒章、第1回円空大賞円空賞 他

■ パブリックコレクション
北海道立旭川美術館
旭川市彫刻美術館
東京国立近代美術館
神奈川県立近代美術館
井原市立田中美術館
ニューヨーク近代美術館
ミデルハイム美術館
他多数

第14回本郷新賞受賞記念 「江口週彫刻展」
1.会  期  平成21年9月5日(土)〜10月25日(日)/休館日 月曜日(但し、9月21日・10月12日を除く),9月24日・10月21日
2.会  場 本郷新記念札幌彫刻美術館本館
3.主  催 本郷新記念札幌彫刻美術館(財団法人札幌市芸術文化財団)
4.後   援 札幌市/北海道教育委員会/札幌市教育委員会
5.観覧料  一  般 500円 (団体 450円)/ 高大生 300円 (団体 250円) 団体は10名以上/中学生以下無料
6.第14回本郷 新賞受賞記念展セレモニー 9月5日(土) 午後2時〜
(1)贈呈式
(2)受賞記念『江口週彫刻展』開会式
(3)受賞記念講演

 第14回本郷新賞要項